広島の朝に、昼に、そして夜に──
半世紀以上、広島の“声”を届け続けた伝説のアナウンサー、世良洋子さんがこの世を去りました。
2025年7月4日未明、廿日市市内の病院で肝臓がんのため死去。81歳でした。
翌5日、葬儀はごく近い親族だけで静かに執り行われたといいます。
あの元気な声、鋭いニュースキャスターぶり、そして飾らないトークで笑いを誘ったパーソナリティ…
広島の人々にとって、世良洋子さんは“身近な有名人”であり、“いつもの声”でした。
改めて、その人生と素顔に迫ります。
■ 広島っ子だった「よっこ」──知られざるプロフィールと幼少期
世良洋子さんは1943年10月24日生まれ、広島県賀茂郡河内町（現在の東広島市）出身。
その後、広島市南区で育つことになります。
同世代の広島県民なら、彼女の“よっこ”という愛称にピンとくる方も多いはず。
学歴も堅実で、
- 広島大学附属東雲小学校
- 比治山女子高等学校
- 昭和女子大学文学部・日本文学科卒業
と、しっかりとした教養を積み重ねた人物でした。
昭和の時代、女性がアナウンサーとして第一線に立つのは、決して容易なことではありません。
ですが、世良さんはその壁を自らの力で突き破っていくのです。
■ RCCで華開く──女性初のニュースキャスター、そして広島の“声”に
1966年、大学4年生のとき、
「地元・広島を盛り上げたい」
そんな想いを胸に、中国放送（RCC）にアナウンサーとして入社。
当時はまだ、テレビもラジオも“男性中心”の時代。
ですが世良さんは、次々と難関の番組を担当し、瞬く間に存在感を放っていきます。
◇ 主な担当番組
- ニュース6 キャスター
- おはようラジオ パーソナリティ
- 中国駅伝実況中継（1977年、女性初の大役）
- 1985年からは「なんでもジョッキー」レギュラー出演
と、ニュースからバラエティ、スポーツ実況まで幅広いジャンルで活躍。
当時を知るリスナーは、
「ニュース読みの凛とした声と、ラジオでのざっくばらんな笑い声が同じ人とは思えなかった」
と振り返ります。
そのギャップと親しみやすさが、世良さんの魅力でした。
■ フリー転身後も“広島愛”一筋──農業と写真、そしてごぜん様さま
2004年、定年退職とともにRCCを離れますが、世良さんの声が消えることはありませんでした。
地元で人気のラジオ番組
**「平成ラヂオバラエティ ごぜん様さま」**に再び登場し、
「よっこ、まだまだ元気じゃけん！」とリスナーを沸かせます。
さらに驚きなのがその農業と写真活動。
2009年から約10年間、安芸太田町で田畑を耕し、
“野良仕事の汗と土の匂い”に親しみながら、広島の自然をカメラに収めていました。
アナウンサー人生だけでなく、
「地に足の着いた暮らしを大事にする」
そんな姿勢が、晩年の世良さんをさらに魅力的にしたのです。
■ 結婚・家族は？ プライベートのベール
さて、ここが気になる方も多いはず。
調べた限り、結婚歴や配偶者、子どもに関する情報は公には出ていません。
その理由は、世良さん自身があくまで“アナウンサーとしての自分”を表に出し、
プライベートは極力控えてきたからとも言われています。
ただ、葬儀が「近親者のみ」で執り行われた点を考えると、
親しい家族がいた可能性は高いでしょう。
「家族を守りながら、自分の仕事に全力を注ぐ」
そんな昭和～平成、そして令和をまたいだ“働く女性の鑑”だったのかもしれません。
■ まとめ：世良洋子さんが広島に遺したもの
時代は変わり、メディアの姿も大きく様変わりしました。
けれど、地域に寄り添い、心を通わせ、声を届ける“人の力”は、決して色あせません。
世良洋子さんは、その象徴的な存在でした。
- 鋭いニュースの声
- 笑いに満ちたラジオトーク
- 大地と共に生きた農業の日々
- 地元広島への、変わらぬ愛情
そのすべてが、多くの人の記憶に刻まれています。
最後に、世良さんの代表的な一言を思い出しましょう。
「広島の空気を吸って、広島の人と笑って、それが私の幸せです」
その幸せを、声を通じて、私たちにも分けてくれた世良洋子さん。
心からご冥福をお祈りします。
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