東京・新宿。誰もが知る都会のど真ん中、マンションの一室で見つかった“異様な遺体”。
そこにいたのは、青いシートをかぶせられた男性と、あとに姿を消した“2人の男”。だが、その中のひとり──梨本俊弘(31)の供述は、あまりにも現実的で、そして恐ろしく“日常的”だった。
「片付けを手伝ってほしいと頼まれて、断れなかった」
このたったひと言に、なぜか多くの人がざわついている。
なぜ断れなかったのか。
彼はいったい何者だったのか。
この事件は「他人事」なのか、それとも、誰にでも起こりうる“狂気の入り口”なのか──。
◆ 事件の発端:新宿区、静かな住宅街で見つかった“違和感”
2025年6月27日。
異臭がすると通報を受けた警察が駆けつけたのは、新宿区内のマンション。都心の喧騒とは裏腹に、落ち着いた外観のその建物の一室で、ブルーシートに包まれた遺体が見つかる。
被害者は成瀬壮一郎さん(35)。
遺体は浴室内に横たえられ、無造作にかけられたブルーシートが、まるで「隠す」ことに慣れているかのようだった。
一体誰が、何のために──?
部屋は散らかっておらず、外部からの侵入もなし。まるで「知っている誰か」が、静かに遺体を“処理”したような状況だった。
◆ 監視カメラに映った「2人の男」
決定的な手がかりとなったのは、防犯カメラ。
成瀬さんの部屋を出入りする2人の男の姿が記録されていた。
そのうちの1人はすでに逮捕されていた北誠一容疑者(30)。そして、もう1人──今回新たに逮捕されたのが、**梨本俊弘容疑者(31)**だ。
マンションから出ていく2人の姿はあまりにも自然で、まるで“やり終えた”人間のように見えたという。
◆ 梨本俊弘の告白:「手伝いを頼まれた。断れなかった」
警察に身柄を確保された梨本容疑者。供述は静かだった。
「片付けを手伝ってほしいと言われた。中に遺体があるとは思わなかった。でも、見た時には…怖くて、断れなかった」
ここで私たちは思わず考える。
あなたならどうするだろうか?
“友人”に頼まれて部屋に入り、そこに遺体があったとしたら──。
すぐ通報する。逃げ出す。誰かに助けを求める。
常識ではそう思う。だが彼は、シートをかぶせ、“片付け”を手伝った。
それは「従順さ」なのか、「弱さ」なのか。あるいは、もっと深いところで“支配”されていたのか。
◆ 北誠一──先に逮捕された“もう一人の男”の闇
先に逮捕された北誠一容疑者(30)は、「成瀬さんは自分の仕事仲間だった」と語っている。
だが、事件については否認を続けている。遺体遺棄への関与も、「自分ではない」と話しているという。
2人の関係性は、もしかすると「主従関係」に近いものだったのかもしれない。
北が“主導”、梨本が“従属”。表面上の友人関係の裏に、隠された力関係があったとすれば──「断れなかった」という言葉にも妙な説得力が宿ってしまう。
◆ 勤務先・仕事・日常──どこにも「社会」がない
この事件が不気味なのは、**2人の容疑者の“素性のなさ”**だ。
梨本俊弘容疑者(31)
- 居住地:埼玉県上尾市
- 職業:不詳(報道上、勤務先は不明)
- 家族構成:不明
- SNS:本人と断定できるものは未確認
北誠一容疑者(30)
- 住所・職業:いずれも不詳
- 被害者との関係:「仕事仲間」との供述
- 所属や勤務先:現時点で報道なし
2人とも、“どこにも所属していない”ように見える。
勤務先があるのか、定職に就いていたのか、家族と連絡を取っていたのか──それすらわからない。
これが、2020年代の「孤立する大人たち」の象徴なのかもしれない。
SNSにも記録はなく、ネットにすら痕跡を残さない彼ら。社会とのつながりが希薄な人間は、事件が起きるまで誰にも気づかれない。
◆ 成瀬壮一郎さん(35)──被害者の素性もまた“見えない”
亡くなった成瀬さんについても、多くは語られていない。
報道によると、「北容疑者と仕事関係にあった」とされるが、その仕事内容も、日常生活の様子も不明。SNSのアカウントも見つかっておらず、ネット上では「夜職」「投資関係」などさまざまな噂が飛び交っている。
ただ、そのどれもが根拠のあるものとは言いがたい。
成瀬さんがどんな人間で、なぜ狙われ、なぜこうして遺体となってブルーシートの中にいたのか──
全てはまだ「仮説」に過ぎない。
◆ “断れなかった”の裏にある闇
改めて考えてみよう。
なぜ彼は、遺体を見て逃げなかったのか。
なぜ、片付けに手を貸したのか。
なぜ、「断れなかった」のか。
これは、単なる共犯の物語ではない。
依存、支配、孤独、そして“どこにも居場所がない人間”の結末なのかもしれない。
梨本容疑者が語ったように、「怖かった」「巻き込まれたくなかった」と思ったのは、ある意味“人間らしい”反応だ。
だが、それをもってしても「罪」は消えない。
◆ まとめ:都市の裏側に潜む“人間関係の死角”
この事件には、刃物も銃も登場しない。
だが、**人間関係の「狂い」**が、ひとりの命を奪い、ふたりの人生を破壊した。
- 職業もわからない
- 勤務先もない
- 家族にも触れられない
- SNSも更新されない
こんな人間たちが、確かに東京で“生きて”いた。
そして、その関係性が壊れたとき、静かに“死”が訪れた。
私たちが見ているのは、日常と非日常のわずかな境界線なのかもしれない。
そしてその線は、思っているより、ずっと身近にある。
コメント